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CMMI&アジャイルコンサルタント

匠Methodの概要その2-モデルの内容

6枚のシンプルな絵でなんでもデザインできる

 システム情報、CMMIコンサルティング室の小林浩です。第6回CMMI&アジャイルコンサルタントのブログをお届けします。
 前回は匠Methodとは何かについてとその根底にある思考要素「知・情・意」について説明しましたが、いかがでしたでしょうか。

 第2回目は、匠Methodに含まれるモデルの内容について説明します。
単なる説明だけでは面白くないと思いまして、「昔の自分へのアドバイス(2023年の私から2019年の私(初心者)へ)」と題して、自分の経験を通じて学んだことも踏まえてご紹介したいと思います。

プロフィール 小林浩

1.匠Methodのモデルの全体像

前回お話したように、匠Methodは非常にシンプルで、次の6枚の図(モデル)で会社のビジネスから個人のキャリアまで同じ方法でデザインすることができます。

匠Method知識体系

上記のうち、ビジネスコンテキストフロー(現業務フローと新業務フロー)は業務改善以外では使用しないことが多いので、ここではそれ以外の5つのモデルについてご説明します。
これら5つのモデルは、思考の3要素の「知・情・意」と関連しており、それらを表した絵が以下になります。

匠Methodで共創型ビジネスを創る(3つの思考との関係)

この絵からも、匠Methodは「知・情・意」をバランスよく含んでいることが分かります。

2.匠Methodによるデザインの対象

匠Methodのモデルを使用してデザインする対象は、大きく分けると以下の2つです。

    • チーム(会社、部門、チーム、プロジェクト、個人など、ヒトに関すること)
    • プロダクト(製品やサービスに関すること)

話をシンプルにするために、当ブログではチームデザインの文脈でご説明しますが、基本的な考え方はチームデザインもプロダクトデザインも同じです。チームデザインとプロダクトデザインの違いについてはSE4BSのWebサイト「4.実践トライアル編(企画モデル編)」に詳しい説明がありますので、より深く理解したい方は是非読んでみてください。

3.匠Methodの各モデル

 匠Methodには6つのモデルがありますが、前述の理由からここでは「ビジネスコンテキストモデル」を除いた以下のモデルをご説明します。

      1. ステークホルダーモデル(情)
      2. 価値分析モデル(情)
      3. 価値デザインモデル(意)
      4. 要求分析ツリー(知)
      5. ゴール記述モデル(知)

作成する順番は、
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)
あるいは
(a)、(c)、(b)、(d)、(e)
のいずれかになります。
つまり、(b)価値分析モデルと(c)価値デザインモデルはどちらを先に作成しても問題ありません。書籍「匠Method~新たな価値観でプロジェクトをデザインするために~ (著:萩本順三氏)」のP.138には次のようなアドバイスがあります。

対象課題に明確なビジョンやコンセプトが最初から固まっている場合なら、(c)価値デザインモデルを先行して作成することができる。そうでない場合は、ビジョンやコンセプトなどを書きようがなくて、無理やり書いても『絵に描いた餅』のようなものになってしまう。

 具体的な指針としては、以下のように考えると良いでしょう。

「(c)価値デザインモデル(意)」を先行すべきケースしっかりとしたミッションを持っているチームや、コンセプトを明確に打ち出す必要のあるプロダクトのデザインを行うとき
「(b)価値分析モデル(情)」を先行すべきケース既存ビジネス慣習を脱却したいとき、上記に当てはまらない場合(寄せ集めのチームのデザイン等)

なお各モデルの作成は、この順番通りに一方向に進めるのではなく、行ったり来たりしながら洗練されていきます。(b)と(c)のどちらを先に始めるべきかについては、あまり深く悩まずに、感覚で決めて問題ありません。結局、あとで何回も見直しますので。
それでは各モデルに関して、(a)から順に詳しくご説明いたします。

(a)ステークホルダーモデル

ステークホルダーモデル

 匠Methodでの最初のステップは「(a)ステークホルダーモデル」の作成です。これは「情」のモデルです。自分の組織・チーム・プロジェクト、あるいは自分自身に関連のある人達を幅広く洗い出します。
 サンプルの絵のように、必要に応じてグルーピングしたり、ステークホルダー間の関連を表現したりします。またステークホルダーの問題意識が分かっている場合は、あるいは想像できる場合には、それも記述します。
 ステークホルダーをどこまで具体的に定義するべきか悩むかもしれませんが、それは場合によりますので、最初はあまり深く考えずに洗い出してください。他のモデルを作成しながら見えてきますので、そのときに調整すれば大丈夫です。
 重要なポイントは、ステークホルダーを洗い出すには以下を必ず含めることです。

        • 自分達自身
        • 製品やサービスを使用するエンドユーザー
        • 未来のステークホルダー

 「ステークホルダーモデル」を作成すると、自分達の周りにこんなにたくさんのステークホルダーがいたのかと驚かされ、視野が大きく広がります。

(b)価値分析モデル(価値記述と目的の関係性)

価値分析モデル(価値記述と目的の関係性)

「(b)価値分析モデル」は「情」のモデルです。ステークホルダーにとっての価値は何かを考えます。
 まずはステークホルダーモデルで洗い出したステークホルダーから、重要なものを選択して上部に横に並べてください。その際に、ステークホルダーモデルで述べた、

        • 自分達自身
        • 製品やサービスを使用するエンドユーザー
        • 未来のステークホルダー

は必ず含めるようにしてください。
ステークホルダーが多い場合には絞り込むのが難しいかもしれませんが、メンバー内で投票するなどして10個以内にしてください。
 次に、各ステークホルダーの下に、彼らにとっての価値は何かを書きます。その際、以下を含むことが推奨されています。

シチュエーションどんなときにその価値を感じるのか?
手段どんな手段によって価値が提供されるのか?
価値それが提供されるとどう嬉しいのか?

気を付けてほしいのはこれら3点を箇条書きにはしないということです。文章の形で、魅力的なストーリーを語るように心がけてください。
 特に「手段」は、後に「要求分析ツリー」を作成する際に活用しますので、必ず書くようにしてください。「シチュエーション」は書くのが難しい場合は省くこともあります。
 「価値」を表現するときには「・・・して嬉しい。」という表現を使ってください。不思議なことに「嬉しい」という言葉を使うと、よりステークホルダーに寄り添って考えることができて、良い発想が生まれてきます。
 さて、ここからが面白いところです。今まではステークホルダーの視点で「嬉しい」を考えてきました。ここで自分達の視点に戻って、「そもそも私達のチームやプロダクトの目的は何だっけ?」と考えてください。そしてその目的を洗い出して、価値記述の下に並べてください。(価値デザインモデルは基本的には「情」のモデルですが、ここで自分達の目的という「意」を登場させるのです)
 次に、目的と価値記述を関連づけてください。具体的には、目的にアルファベットや番号でIDを付けて、それを関連する価値記述に記入します。もしMiroなどのオンラインのホワイトボードツールを使っている場合は付箋の色でも関連づけるとより分かりやすくなります。この作業により「目的を価値によって検証する。」のです。

■昔の自分へのアドバイス

●目的と価値が繋がらない

 実際にやってみると目的と価値が簡単に繋がらないことがありますが、心配する必要はありません。多かれ少なかれそれは起こります。典型的な現象とその対応策をご紹介します。

(事象1)
価値記述に合う目的が見当たらない

    • その価値記述は自分達の組織やプロジェクト、プロダクトと関係が無いのかもしれません。その場合は価値記述を削除してください。
    • 逆に、価値記述からまだ言語化されていなかった大事な目的に気が付くこともあります。そのときは、目的を追加してください。

(事象2)
目的に合う価値記述が見当たらない

    • その目的はどのステークホルダーの価値にも繋がらない、自分達の独りよがりの目的だったのかもしれません。その場合はその目的を削除します。
    • 逆に目的から、忘れていたステークホルダーに気が付いたり、提供価値に気が付いたりすることもあります。その場合は、ステークホルダーを追加したり、新たな価値記述を追加したりしてください

(事象3)
価値記述に合う目的が複数ある

    • 価値記述を複数の目的と関連づけても結構です。もし目的のIDに加えて付箋の色で関連づけている場合には、最も関連が深いと思う目的の色に合わせてください。

●目的と価値の繋がりに自信が無い

 とりあえず目的と価値記述を繋げてみたものの、本当に繋がっているのかな、無理やり繋げている気がする、などと悩んでいる人がいるかもしれません。実際、物事を論理的に考えるのが得意な人ほど悩む傾向にあるようです。匠Methodの開発者の萩本さんは「人間は感性で握手できる」と言います。例えば「パンは好きですか?」と聞かれて、多くの人は「はい、好きです」「パンはあまり好きでは無くて、ご飯の方が好きです」と会話できます。しかし厳密には、パンにも色々な種類があり「食パンよりご飯が好きだが、ご飯よりフランスパンが好き」という場合もあるかもしれません。でも普段はそこまで厳密に考えながら会話しませんよね。この「価値分析モデル」や後述の「価値デザインモデル」では論理的な繋がりは深堀せずに、あえて「いい加減で」止めておくことが肝要です。これらのモデルでは感性のレベルで繋げておいて、論理的に考えるのは後の要件分析ツリーで目一杯考えればいいのです。
 書籍「ビジネス価値を創出する『匠Method』活用法(著:萩本順三氏)」(以降、『匠Method』活用法)のP.16~17には以下のようなことが書いてあります。

方法論を作る過程で、論理的に書けば書くほど自分の考える良い方向から遠のいてしまうという不思議な現象に遭遇したのです。(途中省略)単純なことがらにも多大な時間を要してしまい、実際のビジネスでは使えないものになってしまいことが多発しました。

萩本さんは、論知的な美だけを追求すると虚像を追いかけることになってしまうことに気が付き、それを「論理的美の虚像」と名付けました。その「虚像」を排除するために、匠Methodでは感性的な発想を組み込むようになっています。それはつまり「人が感じるものや感じたことをカタチにする」ことだと述べられています。

●ステークホルダーや価値記述が大量にできて時間がかかる、終わらない

「(b)価値分析モデル(情)」を「(c)価値デザインモデル(意)」より先に作成しているときに起きがちです。そんなときには、

  「♫さまざまな角度から~、物事を見ていたら、自分を見失ってた」

という曲が頭の中に鳴り響いたりします。この曲が鳴り出したら価値分析モデル(「情」のモデル:他人視点)の検討を一旦止めて、価値デザインモデル(「意」のモデル:自分視点)の作成に移りましょう。そのときこそ「見失った自分を取り戻す」のです。

(c)価値デザインモデル

価値デザインモデル

「(c)価値デザインモデル」は「意」のモデルです。自分達の意志を以下の要素で表現します。

ビジョン将来チーム(又は組織、プロジェクト、プロダクト等)で達成すべき夢
コンセプトビジョンに近づくために重要とする3大目標(構想)
言葉チームを一言でいうと何?(キャッチフレーズ)
 意味 チームの全体が示す意味を解説
 ストーリー ビジョンに向かって進む道のりをストーリー化
 デザイン チームのロゴイメージ

「ビジョン」では、将来の夢を高らかに掲げましょう。達成に数年かかるような大きな夢を描きます。
「ビジョン」に近づいて、達成するために重要な3大目標あるいは3大構想を「コンセプト」に表現しましょう。コンセプトは「ビジョン」達成に必要なマイルストーンとして表現されることもあれば、同時並行で狙うべき目標として表現されることもあります。上記の絵は後者の例です。
 「言葉」も考えましょう。「一言で言うと何か」を魅力的なキャッチフレーズとして表現してください。
「ストーリー」では、自分達が「ビジョン」へ向けてどのように進んでいきたいのかについて物語を書きます。上記の例はシンプルですが、自分達とステークホルダーにとって魅力的で、イメージが浮かぶように書いてください。
「意味」には、対象とするチーム、組織、プロジェクト、プロダクト等をなぜ作ったのかを解説する文章を書いてください。その中で、チームを創るに至った背景も描くと良いでしょう。
 ただし「意味」と「ストーリー」については、上記のガイドに縛られずに感性を刺激する自由な発想を大事にしてください。
「デザイン」では自分達のチーム(または組織、プロジェクト)のロゴイメージを作成してください。「デザイン」は他の5つの要素から生まれることもあります。逆に「デザイン」を考えることで、自分達が本当にやりたいことに気が付いて、それから5つの要素が洗練されることもあります。

■昔の自分へのアドバイス

●コンセプトは3つでなければなりません

 コンセプトの候補が4つ以上出てしまった場合も、2つしかない場合も、なんとかして3つにしてください。
どうしても3つにならない場合は、一旦そのままにして他の要素の検討に移ってから、再度考えてみましょう。
 “3つ”というのは経験則から生まれたベストプラクティスですのでこだわってください。匠Methodに含まれる「美」と呼んでもよいのかもしれません。ビジョンが1つ、コンセプトが3つという構造は「美しい」と思いませんか?試しにコンセプトを2つあるいは4つにしてみてください。何となく落ち着きませんよね。美しくありません。
書籍「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?経営における『アート』と『サイエンス』(山口周著)」のP.28では以下のように述べられています。

『美』は、必ずしも目的がはっきりしていない場合であっても『美しい』と感じられる。そして『美しい』と人が感じるとき、それはなにがしかの合理的な目的に適っている、というのがカントの指摘です。

言い換えると、「正しい判断をするには、『理性』だけに依存せず『感性』の活用が不可欠である」ことが述べられています。
「“3つ”に美を感じるのは、それがなにがしかの合理的な目的に適っており、感性を活用して正しく判断している。」と理解してください。

●自分達をブランディングするために、できるだけ全部の構成要素を作成しましょう

 私はこのブログを書き始めるまで、価値デザインモデルについて、以下のように思っていました。

6つの構成要素の中で後続の要件分析ツリーに連れて行くのは『ビジョン』と『コンセプト』だけ。だから最低限この2つがあれば先には進める。つまりこの2つの要素が主役で、他はサポーターだ。だから急いでいるときは『ビジョン』と『コンセプト』だけ作ればよくて、サポーターの4つは無理して作らなくてもよい。

しかし、それは間違いでした。
 価値デザインモデルでは、自分達、または提供するプロダクトをブランディングするつもりで作る必要があります。匠Methodを活用した本格的なブランドデザインを行うメソッドに「匠Method for BRANDING」があります。(参考:『匠Method』活用法の第5章「ブランディングの本質は『表現』と『活動』を強くすること」)
このメソッドの中では、価値デザインモデルの「デザイン」「言葉」「意味」「ストーリー」は大変重要なインプットとなります。ブランドデザイン専門のメンバーは、これらのインプットを使用して魅力的なデザイン素材を作成します。
 また、同じく『匠Method』活用法のP.34には興味深いことが書いてあります。匠Methodを作成し始めた当初は、価値デザインモデルの「コンセプト」には何も書かずに、コンセプトを「言葉」、「意味」、「ストーリー」、「デザイン」の全体で示していたそうで、「3つのコンセプト(構想)」を言葉で表すようになったのは後になってからと。そのエピソードを知ってから、「言葉」、「意味」、「ストーリー」、「デザイン」の重要性をより深く理解することができました。
 6つの構成要素がお互いに様々な刺激を与えあって、成長していくイメージを私は持っています。実際、時間が無いと、とにかく先に進めるために「ビジョン」や「コンセプト」だけを作成して、他の4要素の検討が不十分、あるいは省略されることがあります。しかしながら、そのようにしてできた「ビジョン」や「コンセプト」は、あまり気持ちが入っておらず魅力を感じない、ありきたりな表現に留まることが多いような気がします。

(d)要求分析ツリー

要求分析ツリーの構造
要求分析ツリー

 価値分析モデルと価値デザインモデルを完成させたら、いよいよ(d)要求分析ツリーを作成します。これは「知」のモデルです。これまでのモデルでは「意」「情」といった感性を重視していたのに対し、ここで初めて「知」のモデルが現れて、論理が重視されるようになります。感性重視から論理重視にガラッと変わるので、ここで様々な衝突が生まれ、そこから新たな気づきを得ることになります。
要求分析ツリーの作成手順は以下の通りです。

      1. 価値デザインモデルから「ビジョン」と3つの「コンセプト」をコピーして、要求分析ツリーの「戦略要求」の領域に置く
      2. 「ビジョン」から3つの「コンセプト」のそれぞれを線で結ぶ
      3. 価値分析モデルから「目的」をコピーして、要求分析ツリーの「戦略要求」の領域に置く
      4. 「コンセプト」と関連が深い「目的」を線で結ぶ
      5. 「目的」を達成するために必要な「要求」を考えて、当ツリーの「業務要求」の領域に置く
      6. 必要に応じて「要求」を更にブレイクダウンして、線で結ぶ
      7. 「要求」の中で、ITに関連する要求があれば、当ツリーの「IT要求」の領域に置く
      8. 「要求」を満たすための「活動」を考え、当ツリーの「活動」の領域に置き、線で結ぶ
      9. (オプション)ステークホルダーモデルで「問題・課題」が特定されている場合には、それらがどの「要求」に関係するかを考えて点線で結ぶ

(ⅰ)(ⅱ)は簡単ですね。これらは価値デザインモデルから来たので、初めから繋がっています。
 また、(ⅰ)~(ⅲ)では、2つの別のモデルで考えた別々の要素をそのまま持ってきて繋げますが、あえて別々に考えておいて後で繋げるという発想がとても面白いと感じました。

 面白いのが(ⅳ)です。「コンセプト」と「目的」は元々別のモデルから来たので、最初は繋がらないのは無理もありません。そこで両者が繋がるように調整する必要があるのですが、それが匠Methodの醍醐味だと思っています。この作業により「コンセプト」と「目的」が見直され、場合によっては「ビジョン」まで見直されます。これらが見直されると、価値デザインモデルも価値分析モデルも見直しが必要となります。そうして各モデルの各要素を見直しながら、モデルが徐々に洗練されていきます。
 (ⅴ)で「要求」を考えるときに、価値分析モデルの価値記述の中の「手段」がヒントになることが多いです。価値分析モデルの説明のときに、価値記述には「手段」を入れましょうとガイドしているのはそのためです。しかしながら全ての「要求」が価値分析モデルから来るわけではありません。「要求」をブレイクダウンしながら新たな「要求」を考えていくことも必要です。
 (ⅵ)については、IT要求が無い場合があることに注意してください。その場合は「業務要求」から「活動」に直接つなげます。
 (ⅶ)については「要求」と「活動」が明確に区別できない場合もあります。ですが、この段階ではあまり気にしないで大丈夫です。次のゴール記述モデルを作成するときに、「活動」が抽出されてくるはずです。

■昔の自分へのアドバイス

●「コンセプト」と「目的」を繋げるためのコツ

 「コンセプト」と「目的」が繋がらないときにどうすべきかですが、いくつかのコツが分かってきました。典型的な事象とその対応策を以下に示します。

(事象1)
「コンセプト」に一つも「目的」が繋がっていない

    • 「コンセプト」の表現を見直し、「目的」が繋がるようにする。
    • 「目的」を「コンセプト」に合う形で書き直す。
    • 本来その「目的」は自分達の意志とは関係が無いのかもしれない。その場合は「目的」を削除する。

(事象2)
「目的」が複数の「コンセプト」と繋がってしまう

    • 「目的」の方が「コンセプト」よりも抽象度が高くなってしまっているかもしれない。その場合は「コンセプト」の記述の抽象度を高めるか、「目的」をより具体的にしてみる。

 なお、「コンセプト」や「目的」が変更された場合は、必ず価値デザインモデルや価値分析モデルも見直すようにしてください。

(e)ゴール記述モデル

ゴール記述モデル

(e)ゴール記述モデルを作成するには、まずは要求分析ツリーにある「活動」をコピーして、ゴール記述モデルの左端に置きます。ゴール記述モデルは「知」のモデルです。それぞれの活動について論理的に以下を定義します。

          • 誰が(Who)
          • 何を(What)
          • いつから(When)
          • いつまで(When)
          • どうする(What)
          • 評価尺度(How much)
          • 目標値(How much)

いかがでしょうか?これはスケジュールを立てたことがある人であれば、皆さん馴染みのある作業だと思います。5W1Hの中の、Whatの部分を「何を」と「どうする」に分けたり、Whenを「いつから」と「いつまで」に分けたりすることで、活動内容が明確になります。またHow muchも「評価尺度」とその「目標値」の両者を定義することで、達成すべきゴールが明確になります。
 さて、ここにはWhyがありませんが、なぜだと思いますか?それは要求分析ツリーがWhyを示しているので、わざわざ書き出す必要が無いからです。要求分析ツリーを見れば「なぜこの活動を行うのか?」が一目瞭然です。それだけでなく「この活動はどのくらい重要か、それはなぜか?」ということも分かります。つまり、要求分析ツリーにより「活動」の重要性や優先順位も分かるようになるのです。

■昔の自分へのアドバイス

●とにかくゴール記述モデルまで作成しましょう

 要求分析ツリーまで作成できたら、大きな達成感が得られるので、そこで満足してしまうことが多いです。しかし、要求分析ツリーまでは言わば「絵に描いた餅」で、このままでは餅は生まれず、食べられません。活動計画を作成して、実際に活動を実行することで、成果が生まれます。
最初から全ての活動について、全ての要素を定義する必要はありません。要求分析ツリーを見ながら、優先順位の高い「活動」から順番に定義してください。

いかがでしたでしょうか。長くなってしまいましたが、実際に匠Methodを試してよく起こる「あるある」を私の経験も踏まえまとめてみましたので、お役に立てる部分があるかと思います。ですが、匠Methodを効率的・効果的に深く理解するためには、トレーニングを受講するのが早道です。(株)匠BusinessPlaceが匠Methodのオンライン ビジネスデザイン研修を提供していますので、本格的に学びたい方は是非ご活用ください。

 次回は、私が実際に関わった匠Methodの適用事例をご紹介しつつ、匠Methodがこれからの時代にますます必要とされる理由を述べたいと思っています。

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