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CMMI&アジャイルコンサルタント

CMMIの定義する組織成熟度のご紹介

各成熟度レベルの組織の特徴とは?

システム情報、CMMIコンサルティング室の小林浩です。第2回CMMI&アジャイルコンサルタントブログをお届けします。
前回のブログでCMMIには5段階の成熟度レベルが定義されていると述べました。
そこで今回は、それぞれの成熟度の組織がどのような特徴を持つのかをご説明いたします。

プロフィール 小林浩

1.CMMIの成熟度の評価方法
 CMMIの成熟度の正式な評価は「ベンチマークアプレイザル」と呼ばれる方法に基づき行われます。ベンチマークアプレイザルでは、成熟度の評価対象組織として、会社全体、事業部単位、部単位、プロジェクトなどが該当し、ISACAが認定したCMMIリードアプレイザーの有資格者がリーダーとなってアプレイザルチームを組んで分析し、メンバー全員のコンセンサスを得ながら評価します。なお、アプレイザルチームメンバーになるために必要な資格は、3日間のトレーニングを受講し、試験に受かることで取得できます。 
成熟度の評価結果は、ISACAのWebサイトに3年間掲載されます。

CMMIの定義する組織成熟度のご紹介_01

 

2.CMMIの各成熟度の特徴とは?
 次に、CMMIの定義する成熟度についてご説明いたします。
当社のWebサイト「SI&CのCMMI活用アプローチ」にISACAによる正式な説明を掲載しておりますが、今回はその内容に補足してご説明したいと思います。

(注意)CMMI V2.0の初期のリリースでは、成熟度レベル0が追加され6段階となっていましたが、後続のリリースで5段階に戻り、最新のV3.0でも5段階で定義されています。当社のWebサイトを含め一部のサイトで6段階と記載しているのは、V2.0の初期リリースの情報に基づいているためです。ここでは5段階の定義に従ってご説明いたします。

ISACAによる定義は次の通りです。

(1) 成熟度レベル1

CMMI 成熟度レベル1

■補足説明
 レベル1の組織では、多くのプロジェクトで仕事は場当たり的で、やり方が定義されておらず、成功するかどうかは人に大きく依存しています。とてもリスクが高い状態と言えます。

(2) 成熟度レベル2

CMMI 成熟度レベル2

■補足説明
 レベル2の組織では、全てのプロジェクトで基本的な管理ができています。各プロジェクトで仕事のやり方(プロセス)を定義し、計画を立て、計画通りに進んでいるか監視し、計画との乖離は課題として管理し解決します。レベル1と比較すると、プロジェクトが成功する可能性が大きく向上します。
 しかしレベル2の組織では、各プロジェクトが独自の方法で仕事を進めているので、プロジェクトへの新規参加者は、新しい方法や言葉を覚えるのに時間がかかるかもしれません。またQCD(品質・コスト・納期)の状況が測定され報告されますが、その内容は各プロジェクトで異なるため、上位管理層がプロジェクトを跨って比較管理することが困難な場合があります。

(3) 成熟度レベル3

CMMI 成熟度レベル3

■補足説明
 レベル3以上の組織では、組織(会社や部門)が組織標準プロセスを提供します。また組織標準プロセスを元に、個別の部署やプロジェクトに合ったプロセスをどのようにして作成するべきかを説明するテーラリング指針 を提供します。テーラリング指針には、例えば標準プロセスに定義されるタスクの実施や成果物の作成に関して、どれが必須、どれがオプション、どんな場合は省いて良いかなどを定義します。
 レベル3の組織のプロジェクトは、テーラリング指針に従って、プロジェクトの特性に合わせて組織標準プロセスをテーラリングして活動を遂行します。どのプロジェクトも同じ言葉の定義のもと、仕事の方法が統一されるので、組織内で他のプロジェクトから移動してきた新規参加者はスムーズにキャッチアップできます。またQCDに関する測定項目や報告内容の標準化が進むので、上位管理層がプロジェクトを跨って比較しながら管理することが容易になります。
 レベル3になると、各プロジェクトで得られた経験や教訓は組織へフィードバックされ、改善された組織標準プロセス、組織標準資産(ガイドやテンプレート等)、組織提供トレーニング等を通じて、組織内部に展開されます。言い換えると、レベル2の組織では各プロジェクトに埋もれていた良い方法や苦い失敗経験が、レベル3の組織では特定され横展開されるようになります。つまりレベル3の組織では、組織全体での改善ループが回っています。
 多くの組織では、成熟度レベル3を改善のターゲットにしています。

(4)成熟度レベル4とレベル5(高成熟度)

CMMI 成熟度レベル4
CMMI 成熟度レベル5

■補足説明
 レベル4とレベル5はまとめて高成熟度(High Maturity)と呼ばれます。高成熟度のレベルの評価では、通常のCMMIリードアプレイザーの資格に加えて、高成熟度リードアプレイザーの資格を持つ人がリードする必要があります。(ちなみに私は高成熟度の資格も持っていますが、この資格を取るのはなかなか大変でした。)
 CMMIにおける“定量的”の意味は、単に“数値を使って”という意味を超えて、“統計的手法を用いて”という意味を含みます。
 レベル4の組織では、組織の事業目標達成やプロジェクト目標達成のために重要なプロセスに関して、管理図等の統計的手法を用いてプロセスの能力や安定性を評価したり、回帰分析やシミュレーション等を用いた予測モデルを使用したりしながら、各プロジェクトが目標達成へ向けてコントロールします。また改善策の有効性を仮説検定等の統計的手法を用いて評価します。
 最高位のレベル5になると、組織の事業目標と改善活動との繋がりについても統計的手法を使用してより深く理解しているので、各改善活動が事業目標達成に貢献する可能性が更に高まります。
 数値による定量的管理はレベル2や3の組織でも実施していますが、レベル4と5の高成熟度の組織では統計的手法を用いた定量的管理を実施しています。高成熟度のキーワードは“統計的手法”です。

 今回は、CMMI各成熟度レベルの組織の特徴についてご紹介いたしました。ぜひ皆様からのご意見や感想を頂けると嬉しいです。第3回は、CMMIのプラクティスのご紹介と、CMMIを使うと何が嬉しいのか、どんな適用メリットがあるのかについて、筆者自身の経験も踏まえて述べたいと思います。

当ブログのプロダクトバックログアイテム

  • ブログ開始のご挨拶とCMMIのご紹介【2023/06/05 UP】
  • CMMIの定義する組織成熟度とその特徴【今回】
  • CMMIのプラクティスと適用効果 ※次回予定
  • CMMIとアジャイル、APH
  • CMMIの効果的な使い方
  • SE4BSのご紹介
  • 匠Methodのご紹介
  • アジャイル・スクラムの学び方
  • アジャイル品質パターン QA2AQのご紹介
  • アジャイルのフレームワークやツールキット(SAFeやDA)の紹介とCMMIの関連
  • GQM+Strategiesの概要、CMMIとの関連、匠Methodとの関連
  • SEMAT

次回の更新も、ぜひご覧いただけますと幸いです。

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